広告でちらっと見た「ミュージカル嫌いの勝ち組OLが、インチキ催眠術師に音楽を聞くと歌って踊らずにはいられない身体にされてしまった!なんとか催眠術を解いてもらうため、催眠術師を探す旅に出る…」というあらすじに撃ち抜かれ『ダンスウィズミー』見てきました。
楽しい映画の効用である「頭空っぽで見れて、見終わったら身体が軽くなる」を全身で浴びてきた。見る前から分かってたけどコンセプト勝ち過ぎる。
見終わった直後の感想
ダンスウィズミー、ハチャメチャによかった!! ララランド冒頭のテンションで最後まで突っ走るハイテンション、ブルースブラザーズのようなぶっ飛び展開、コンセプトの時点で楽しいを確信したけどブラボーな出来映え!!何より三吉彩花さんの表情がエクセレント!
— しゅー a.k.a めがねかけてるだけ (@bumpofchokin) August 17, 2019
頭を整理して少し言い換えると、全編ブルースブラザーズのような力業の展開で、ララランドの前半部分(セバスチャンとミアがに出会う前)を見ている時の高揚感・キラキラ感を楽しめた。
前半はネタバレ無し、後半はネタバレ込みで感想書いていきます。
あらすじは冒頭の通りです。細かい設定とかあってないようなモノだから笑
鑑賞後はぜひ、サントラもお楽しみください!選曲は一昔前のヒット曲が中心なので、お父さんお母さん世代でも楽しめる&原曲知らない若い世代にはオリジナルと勘違いするくらいにはバッチリはまってます。
改めて、映画見終わってスグにサントラを聞けるサブスクの恩恵に感謝
ネタバレ無し感想
まず、日本でここまでミュージカル度が高い映画は少ない気がする。自分は見たことがない。そんな日本でこういう映画を作ったことに、改めて拍手を送りたい。
記事のタイトルにもあるように、日本人は歌うのも踊るのも苦手だ。そもそも黒人は喋ってるだけでラップになるくらいリズム感があるし、洋画では登場人物が踊るシーンが沢山ある。要は海外の人は遺伝子レベルで踊れる身体と言える。
ジャスティン・ティンバーレイクのこのPVが分かりやすい。いろんな人が曲に合わせて歌ったり、踊ったりしている。体の動かしたも多彩で、リズムへの適応性が高い。
対して日本人はリズムの適応性は低い。この辺りは農耕民族と狩猟民族の文脈で語られているし、演歌や盆踊りを聞いて分かるように日本人のノリ方は非常に単調である。
この曲も上と同じように曲に合わせて歌って体を動かしているけど、ノリ方の違いが顕著に出ている。
そんな持って生まれたリズム感の圧倒的な差に加え、恥じらいやシャイさも相まって人前で歌ったり踊ったりするのは、こと一般人には縁のない話なんですよね。
ピクサーの『リメンバーミー』だと劇中の伝説のミュージシャン、デラクレスが「歌わずにはいられないんだ」というセリフから「 つのーるー♪おもいー♫」って歌いだすシーンがあるけど、「イヤ別に歌わないわ」ってなるのが日本人なんです。
アナ雪の「みんなでレリゴー歌おう」企画ですらズッコケて、最近になって応援上映とかが一部の作品で流行ってきたくらい。
長くなりましたが、これだけ歌とダンスに円がない日本人を躍らせる方法として「催眠術」を持ってくる発想が本当に天才だなと。胡散臭さとリアリティのラインが絶妙で「コメディの設定としては面白そうだし、まぁ、しょうがないか」となる笑
そんな催眠術にかかって歌って踊る主人公には、元さくら学院で今はモデルの三吉彩花さんが演じている。三吉さんの仏頂面→音楽鳴って嫌がってる→身体は反応してしまいキメ顔でダンス→やっちまったー!!という、一連の変化がとにかく最高なんですよね。
監督もインタビューで「踊りたくないのに体が動いてしまうのがこの作品の肝だから、主役オーディションの中で不機嫌そうな顔をしていた三吉さんを選んだ」と言っている。
本当にその通りで、劇中の三吉さんは良く言えばクールビューティ、悪く言えば気が強そうで つっけんどんな美人なんですよ。大企業に就職してタワマン住まいの勝ち組OLさんでして、そんな三吉さんが踊るからこそのギャップだし、踊ることで人生が崩れていくのがかわいそうだけど笑ってしまう。一連のダンスシーンは日本映画の歴史の中でも意味のあるシーンになっていると思います。
ダンスシーンが優秀すぎる一方、お話全体で見るとやや乱暴で、見ている最中も薄々感じたし後々考えると脚本の穴はたくさんある。無理くりな展開は多い。けどツッコミする暇を与えない展開の速さ進んでいく。最後はちょっといい話風になる要素を少しだけ入れて終わると、見終わった時は「なんとなく楽しかったな」という記憶が残る。
こうして色々思うことはあるけど最終的には「まぁ面白かったし、いっか」となった自分はまんまと監督の力業に押し負けたわけです。
ネタバレあり感想
※以降はネタバレになりますので未見でネタバレNGの人はご注意ください
ここからはちょっとだけネガティブ要素もあります。まず構成、記事のタイトルにミュージカル風コメディと書いたように完全にミュージカル映画とは言えない。
というのも前半に歌とダンスによって三吉さんの人生が崩れていくのを描いた後、後半は催眠を解くため、インチキ催眠術師を探す旅になります。そこで出会うドタバタを乗り越えていくロードムービーなんです。
歌とダンスで人生が崩れた前半から一転、後半はそれが状況を変えるキーになるけど、脚本のやっつけ感というか、つぎはぎ感が否めない。煽り運転のヤンキー兄ちゃんも、振られた女が元カレの結婚式に殴り込みいくのも、シーンとしては面白いけど、どうも流れがキレイでない。重ね重ね、それぞれは面白いんだけどなぁ
そんな後半のロードムービーには、やしろ優さん演じる相棒と一緒に旅に出る。役柄は催眠術師の元アシスタントなんだけど、やしろ優がハマり役すぎる。日常生活はダメなとこメチャメチャあるけど、嫌いになれない面白いヤツ感がすごい。お前絶対に集合時間5分以上遅れるだろう… でも飲み会では毎回お腹がよじれるくらいのエピソード絶対持ってきそうなんだよなぁ
三吉さんと喧嘩別れした後のコンビニで、ふてくされながら焼きそば食べるシーンとか、「こういう人いそう」感が凄まじい。焼きそば湯切り失敗して駐車場にこぼしてしまい、仕方ないから道路に接していない上の方にソースの粉をかけて少しだけ食べる一連の流れが本当に悲惨で悲惨で…
ちなみに催眠術の実演シーンで、やしろ優がタマネギをリンゴだと思い込んでむしゃむしゃ食べてる時は本当に催眠術にかかった状態で撮影したらしい笑
他のキャラもまた良くて、chay演じる振られたストリートミュージシャンも圧巻だった。振られた元カレの結婚式に殴り込みに行くシーンのchayの表情がイッちゃってた笑。個人的にはドラマ『デート!』の主題歌『あなたに恋をしてみました』のイメージしかなかったけど見る目変わったわ~
目が笑ってなさそうなビジネススマイル振りまいてるだけかと思ってたけど(失礼)、このシーンは狂気じみてた。ファンから見ても貴重な一面が見れたのでは。
もちろん主演だって負けてない。踊らなくて、歌うだけのシーンだけど、三吉さんが3時のメロディに合わせて歌ってしまって、その後変に思ったムロツヨシが まさかとは思いつつ歌ってみたらつられて歌うも、歌い終えた瞬間は「何してくれとんねん!」って顔になるんですよ
こんな感じで、粒それぞれはやっぱり楽しい。けれどやはり流れがねぇ。ミュージカル風コメディ故に、後半ぼやけてしまった。
ミュージカルは主人公が気持ちを昂った結果、自分の感情を歌とダンスの身体全体を使って表現する。物語の中のピークで歌って踊るからこそ、よりそのシーンが輝く。
ただ、本作はあくまで「音楽を聞くと歌って踊ってしまう」だけなので自分の気持ちは乗ってない。なんなら唐突に始まる。この設定は最高なんだけど、カタルシスのような、曲が流れたときにガッツポーズは出ない。
「急に歌って踊り出すなんてやばくない?病院行った方がいいよ」というセリフは巨大ブーメランで、いざ自分がその身になってしまった直後は本当に病院に行くものの信じてもらえず、着信メロディに反応して踊ったら「精密検査をしましょう」と言われ、しかし検査の結果に異常は見えず。
途方に暮れる三吉さんに言った、先生の一言「あなた本当はミュージカルやりたかったんじゃないですか?」そして思い出される幼少期のトラウマ…
ここまではメチャメチャ好みだったんだけどな~最後に自分の意思で踊り、ミュージカルを楽しむシーンがあったらと最高だったのに、惜しかった。
ダンスシーンについて
内容についてはこの辺にして、以降は公式の見どころ公開動画を挙げながらダンスシーンをもう少し話ます。(個人的に事前に本編映像みるのはNGだけど、見終わった後に印象的だったシーンの余韻に浸るために大活用してる)
まずは催眠術をかけられた翌日、いつものようにイヤホン付けて出社しようとしたら無自覚のうちに踊っているシーン。がっつりパンチラする勢いで踊る三吉さんも最高だけど、個人的に良かったのは客観的な目線があるところ。
以降のダンスシーンでもそうだけど、曲に合わせて踊って楽しいのは自分だけで、はたから見たらヤベェ動きしてるヤツなだけなんですよね。自分は普段から割と音楽聞きながら体揺らしてるので、(待ち合わせの前に相手に見つかると高確率で「なんかノリノリだった」と言われる)気を付けないと、 知らないうちに小さく「フンッフンッ」とかも言ってるんだろうな。
そして1番の見せ場、会社でラ・ラ・ランドの如く踊るシーン!
会議中にたまたま流したメロディに体が反応してしまい、会社のみんなの前で踊り倒す。シュレッダーした紙屑を紙吹雪として使うアイディアは天才かと思った。つならない日常の権化ともいえるようなアイテムが、こんな風に楽しい時を演出するための道具になるなんて…
www.youtube.com動画にはないけど、踊り出すときに部長っぽい人の頭(ハゲてる)をボンゴみたいに叩いていくのも声出して笑った。ここでもやっぱり楽しいのは自分だけ、周りもあわせて踊ってくれてると思って我に返ると一同ドン引き(そりゃそうだ)
最後はデート中のシーン。音楽が鳴らない静かなお店のはずが、誕生日サプライズがあってバンドの生演奏が始まってイッツ・ショータイム!ちょっとジムキャリーの『マスク』っぽさもあった。シャンデリアでブランコも誰が思いついたんだろう。
ここでも自分の中ではカンペキなテーブルクロス引きでも、実際は人のテーブルの料理全部ぶちまけた人だった。
動画はないけどクライマックスも同じで、踊ってる本人たちにはドレスでも、周りからしたらTシャツ ジャージのまま。このようにダンスシーンで徹底しているのが踊っている本人と周りの温度差なんですよ。
他の人の感想だと「そこは見せないのがお約束」 「ウソとして楽しんでいるのに現実見せられると」といったように否定的だったけど自分は音楽好きとして、とてもよかった。それは「音楽の魔法」をデフォルメして表現していると感じたから
好きな曲を聞いている時の自分は、景色が変わって見えるし、身体は軽くなるし、いつも着てる服だってドレスになるし、何でもできそうな気持になる。音楽好きでライブも通う人は誰しも身体が勝手に動いてしまう1曲ある(ハズ)。
そんな自分にとっては、普段の生活でもライブであっても「好きな曲を聞いて我をブチあがっている時は端から見るとヤベェヤツになっている」というのを再認識できた。
言い換えれば日常生活の中に溢れてるもので、これだけ人を狂わせるのは音楽くらいで、そんな音楽が持ってる魔力を見事に表現してくれた。
そろそろまとめです。
ダラダラ色々書いたけど、「終わりよければすべて良し」 ということで、最後は暴力的に楽しいシーンで殴り掛かってくる。三吉さんは会社を抜けて、やしろ優が始めたダンススクール『ダンス・ウィズ・ミー』に行って、最後はキャスト全員で歌って踊る
締めはライブの如くジャーーン!(タイトルロゴ「DANCE WITH ME」がバーン)からの、今までのシーンをチラ見せして余韻を楽しみながら静かに現実へと引き戻してくれるスロウでジャジーなエンドロールで終わり
こんなの見せられたら、最後は楽しい感情が残る。音楽の魔法も散々見せてくれたし。
ストーリーの流れで合う合わないの差は大きいと思うけど、音楽好きな人にも、音楽そんなに好きじゃない人にも見てもらいたい。そして、王道ミュージカルができない日本ならではなミュージカル映画をもっと見たいので、ぜひ、どこかの会社さん企画お願いします。
それでは