この前「プロメア」見てきました。
この前の「スパイダーバース」に負けないくらいの映像美と、「ニンジャバットマン」と同じくらいのジェットコースターな展開ですごく面白かったです。
その中でもバトルシーンに流れるSuperflyの「覚醒」がハチャメチャにカッコよかったんですよ。みんなそうだけど、サビの呪文が頭から離れない。本人曰く「わたしなりのマントラを作ってみた」 なので特に意味はなく響き重視なんだけど、サビの歌詞にはとんでもないテクニックが隠されていた…
本編で数回流れたこともあって、劇伴として強烈に耳に残ってたけど、
先日リリースされたフル音源を聞いて度肝抜かれた。
2週間ほど聞きまっくた結果、カナリすごいことをやってるので
ここがスゴイよSuperflyの「覚醒」について書きます。
ライブ映像使ったMVは言い逃れできないラスボス感があるので、こちらも必見です
映画本編ではこんな感じで使われてます。
※ネタバレになるため映画未見の人は要注意
そもそも、あの強烈なボーカルのSuperflyを劇伴で使う時点で攻めてる(笑)
皆さんご存知の通り、あのパワフルなボーカルがバックに流れると高確率で映画本編が曲に負けてしまう。
が、「プロメア」は相当な熱量の映画で、そこへ更なる追加トッピングとして「覚醒」がここぞというシーンで流れている。
どちらもお互いの邪魔はせず、観客をアゲまくるの見事なバランス!
そろそろ本題に入りますが、この曲はメチャメチャHIP HOPなんです。
そしてタイアップで流れない2番以降で好き勝手やるというより、頭から最後まで攻めまくってる。
HIP HOPさを感じたポイントは以下の3つです。
曲の構成
韻を踏んでる
ループミュージック
要素としては王道だけど、これをタイアップ曲で、J-POPの人がやったのが狂ってる。
それぞれについて書いていきます。
前情報として、作詞/作曲はSuperfly本人で、プロデュースがアゲハスプリングスの蔦谷好位置さんになります。
詳細はナタリーのインタビュー参照
まず曲構成から
インタビューにもあるように、
サビの歌詞はマントラをイメージした呪文のようなフレーズになってます。
また、Aメロ→Bメロ→サビのような展開はなく、マントラとそれ以外の部分になってます。
しかもマントラ以外の部分は毎回メロディ変わってる。
HIP HOPでは一般的にサビと呼ばれる部分をフック、フック以外をバースと呼んでいて
(なんでわざわざ言い換える必要があるかは不明)バースは割とメロディが変わります。
なので、この曲はマントラがフックで、他はバースととらえることができる。
次に韻の話。
この曲は一般的なケツ(語尾)で踏む脚韻だけでなく、
言葉の頭で踏む頭韻(読み:とういん)もあります。
頭韻が見えるのは1バース目
現る黒い空
鼓動は雷鳴を繰り返す
嵐が来る前に
今宵はあの呪文を授けましょう
「あらわる」と「あらし」、「こどう」と「こよい」で
aaとooで踏んでる。
3バース目では脚韻
目を瞑って 風をすくって
身を溶かして 鐘を鳴らして
「つむって」と「すくって」、「溶かして」と「鳴らして」
uue aieで踏んでる。
これだけなら別に特別でもないし意図は感じないけど、
サビのマントラ部分がスゴイんです。
自分のこじつけもあるけど、
赤 青 緑 で色づけている部分と、太字と下線部
あわせて5つの韻が、頭韻と脚韻を織り交ぜて、かつ踏んでる場所も異なって複雑に踏んでいます。
マハリ ユワレ ガアイェ サヴァナレ
アマレ ディラヒ ジュマギ ガナシャラ
おわかりいただけただろうか。
本当に意味のない呪文だと聞き流されてしまうけど、韻を踏むことで耳に残りやすくなる。
言葉の意味はなく、音を自由に決められるマントラだからこそ、こんだけ好き勝手に踏める。
これだけでもサビのマントラ部分の使い方が上手すぎるけども、この曲のスゴイ さはこんなもんじゃないです。
最後のポイント、ループミュージックについて。
ループミュージックとは、あるフレーズが繰り返されている曲のことです。
この曲でマントラは曲中で度々繰り返されてます。
HIP HOPは一定のビートがループする中で
フロウ(ラップのメロディ)で緩急つけていくけど、この曲は逆なんです。
一定のフロウ(マントラ)がループする中で、サウンドが毎回違う景色を見せる。
じゃぁどんなサウンドなのかと言うと、爆音ドラムを中心にすさまじいバンドサウンドなんですよ。
個人的に、ここまでの爆音ドラムとSuperflyの掛け合いバトルはFree Planet以来
ではどんな風にサウンドが異なっているか。ドラムやギターが際立つけど、ピアノやコーラスだけでなく手拍子やパーカッションなど聞けば聞くほど色んな音が見つかる。
あと3バース目の後ろでマントラが小さい音で鳴っているという…
関ジャムで中田ヤスタカが話していた、サビのフレーズを他の部分に
潜ませることで待ってました感を煽る手法です。
参考:きゃりーぱみゅぱみゅ / 最&高
サビの「最&高」のメロディがAメロで鳴ってる。
しかも時折、最後の「ガナシャラ」と合わせて「覚醒」というフレーズが
スッと入るのもポイント。
これも関ジャムで中田ヤスタカが話してたけど、
同じフレーズの繰り返しの中で1つ違うポイントがあると聞き手は疑問が浮かんで耳に残るらしいです。
参考:Perfume / チョコレイトディスコ
最後だけ「ディスコ」のイントネーションが異なる。
この「覚醒」というフレーズが入ることで文字通り、瞑想から目がクワッと開いて覚醒の瞬間のような雰囲気が出る一方、テンションの違う2つのフレーズが混在して見事な違和感になるんですよね。
さらに「覚醒」と「ガナシャラ」は母音が異なるので韻を踏まなくなるので、メロディと言葉の響き両方から違和感を覚える。
そして、トドメを指されるのが曲の終わり方。
あれだけ繰り返していたマントラフレーズのメロディが劇的に変わって、後半の「アマレ」以降は歌わず、バスっと終わる。このザワザワ感よ!!
ようやく耳が慣れてきたトコへ凄まじい急旋回・急停止
曲を聞き終えると、またあのマントラを聞きたくなってしまい再生ボタンに手が伸びる。
ひとたびこの感覚を知ってしまったら耳から離れない悪魔のような曲です。
そもそも同じフレーズを曲の中で繰り返されるとしつこく感じてしまうけど、
意味のないマントラを使うことで、しつこさを少なくし、アレンジでも飽きさせない。
かつ、マントラは自分で音を決められるから複雑に韻を踏めて、何度も繰り返されるうちにリズムを覚えてしまう。
タイアップ先の作品からインスパイアを受けたマントラを、韻踏んだりビートにしてどんなフレーズよりも際立たせる。
物語のスパイスと楽曲のフック、どちらから見ても素晴らしい働きをしてくれるわけです!!
良い仕事してますな~~~
ちなみに蔦谷好位置さんはプロデュースだけでなくピアノも弾いてます。
ドラムの玉田豊夢さんはいきものがかり、レキシ等のサポートしてる超売れっ子、ギターの名越由貴夫さんとベースの須藤優さんは、Superfly楽曲にたびたび参加しているのでバンドとしても最強の布陣なんですよね。
あと気づいたのが、最近の蔦谷さんプロデュースでHIP HOPを感じる曲、どれも自分の好みすぎる。
ゆずの「うたエール」も
キック×岡村ちゃんコラボ「住所」も蔦谷さん案件
#余談ですが、この2曲は2018年の個人的良かった曲ベスト10に入れてます。
ちなみに「プロメア」エンディング主題歌は、椿屋四重奏のフロントマンで、現在はソロで活躍中している、艶やかな歌声と唯一無二な音楽性の中田裕二さんプロデュースです。
(椿屋四重奏、中田裕二には並々ならぬ愛があるので宣伝)
以下でも聞けます。
※ネタバレになるため映画未見の人は要注意
Superflyの新曲をプロデュースとは聞いていたけど、タイアップのことは知らなくて、エンドロールで「中田裕二」の文字を見れた時つい「うぉっ!?」って声が出てしまった。
プロメア作品単体としても最高だったけどSuperflyの主題歌もよくて、エンドロールで「中田裕二」の文字が見れたのも個人的にはメチャメチャ感動ポイント。映画館の大きなスクリーンでみる中田裕二の名前、プライスレスだったから椿屋四重奏好きはマストです(斜め上すぎる宣伝)
— しゅー a.k.a めがねかけてるだけ (@bumpofchokin) June 8, 2019
中田裕二×Superflyの組合せは2度目で、前回はアルバム曲に作詞・作曲で参加しています。
恋に狂った男性目線の曲で椿屋後期を思わせるギターサウンド、いつもより粘り気のあるSuperflyのセクシーなボーカルが楽しめる一曲になっております。(ぜひともセルフカバーしていただきたい)
下の「ただひとつの太陽」という曲は中田裕二さんの曲でも雰囲気が似ているので、「こういう感じの曲好みかも」と感じた人はぜひ聞いてみてください!!
長くなりましたがSuperflyの「覚醒」は
HIP HOP全盛の今、バンドサウンドで韻もガチガチに踏んでるのに
タイアップ曲として作品と絶妙にマッチしている計算しつくされたとてつもない名曲という話でした。
ここまで読んだ後に曲を聞けば、頭の中からマントラは離れずしばらくは「覚醒」依存症になるでしょう~
最後に完全に私事ですが、なんとこの本記事が海を越えて台湾のオタクにも読んでもらい、台湾で腐女子が感想語りするSNSに載せてもらいました。プロメア人気恐るべし!
前から好きだったのと、どうしても生で『覚醒』と『氷に閉じ込めて』が聞きたかったので、ツアーも行ってきました。
それでは